2002年4月16日火曜日

2002年4月9日 アレン氏との懇談会/TASAの予告編音量基準 /「米国Digital Cinema動向」

主催 (協)日本映画・テレビ録音協会/(社)日本映画テレビ技術協会協賛 (社)日本映画産業団体連合会協力 米国ドルビー研究所/コンチネンタルファーイースト(株)

開催日時 平成14年4月9日(火)14:00~16:00
開催場所 (社)日本映画製作者連盟・会議室


≪参加関連団体≫
(協)日本映画・テレビ録音協会(社)日本映画テレビ技術協会(社)日本映画製作者連盟(社)外国映画輸入配給協会(社)日本映画機械工業会(社)全日本映写技術者連盟全国興行生活衛生同業組合連合会(社)日本映画産業団体連合会 

米国ドルビー研究所副社長のイオアン・アレン氏を招いて、米国映画業界の動向「TASA音量基準」や「米国デジタルシネマの進捗状況」等の話をお聞きする会を開催しました。ご存知のようにイオアン・アレン氏は Dolby Stereoフィルムプログラムの開発者として高名な方ですが、SMPTE、AES、ISO、ITEA、BKSTS、アカデミー技術協会等の映画音響基準策定にも多大に貢献された方です。又、多くの技術文献も発表しており、映画音響に貢献したとして、SMPTEのサミュエルL.ワーナー賞、アカデミー技術協会より科学技術賞、オスカー賞を受賞しています。TASA特別委員会・座長の任務もされているイオアン・アレン氏を招いて米国映画業界の動向をお聞きしました。「TASA音量基準」とは?映画音響の Stereo/Digital予告編が登場して、米国では映画の音量が問題となっていました。予告編の音量が本編よりはるかに大きいため、映画上映館では「予告編」の音量を下げる事となります。それに伴って「本編」の音量も下がる事態となったからです。この問題解決のために、映画の音響再生基準の重要性を考える企業が集結して、TASA(TRAILER AUDIO STANDARDS ASSOCIATION)特別委員会を設置し、予告編音量の推奨基準値を定めました。TASAの予告編音量基準に賛同した、ディズニー、ドリームワークス、MGM、ミラマックス、ニューライン、パラマウント、ソニーピクチャーズ、20世紀フォックス、ワーナーブラザース、ユニバーサル等の映画製作・配給会社やDolby,DTS,Sony等のメーカー、全米映画館主協会(National Association of Theater Owners)、アメリカ映画協会(Motion Picture Association of America)等の諸機関も音量基準として承認。現在、全米映画業界ではTASA音量基準が適用されています。

【懇談会の報告は協会誌163号に掲載】

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≪予告編の音量問題 補足説明≫
アレン氏との懇談会を開催したのは平成14年4月、「TASA予告編音量基準」の話は日本の映画業界にも大きな影響を与えました。日本の劇場主・興行サイドからも「予告編の音量は大きい、日本も予告編の音量を制限できないのか?」との意見が出始めたからです。業界からの意見も徐々に増え、平成14年8月、(社)映画産業団体連合会主催「予告編の音量に関する研究会」が発足したのです。

※(社)映画産業団体連合会とは?(社)映画産業団体連合会(岡田茂会長)傘下団体・・・(社)日本映画製作者連盟、全国興行衛生同業組合連合会、(財)日本映画海外普及協会、(社)映像文化製作者連盟、(社)日本映画機械工業会、写真感光材料工業会、(社)外国映画輸入配給協会、(社)日本映画テレビ技術協会、映画倫理委員会が加盟している映画産業の団体。

以下は「予告編の音量に関する研究会」第1回会議に参加したメンバーです。
平成14年8月30日(金) 14:00~16:00 「予告編の音量に関する研究会」
主催・・・(社)映画産業団体連合会
場所・・・IMAGICA研修室
参加団体・・・(社)日本映画製作者連盟、(社)外国映画輸入配給協会、全国興行衛生同業組合連合会、(社)日本映画テレビ技術協会、(協)日本映画・テレビ録音協会

【参加者】八木信忠(日大)、平井宏侑(東宝)、本田文雄(東映)、横山真一(東映)、矢部勝(東宝)、中村香織(ワーナーブラザース映画)、田島卓(ギャガ・コミュニケーションズ)、松田和博(東宝東和)、高須正道(日本ヘラルド映画)、佐藤一也(東映)、大角正(松竹)、古井厚(大映)、井上秀司(東京テレビセンター)、多良政司(東宝サウンドスタジオ)、中山義廣(日活スタジオセンター)、内田昇一(イマジカ)、松島洋之(アオイスタジオ)、木村栄二(東映化学工業)、上倉泉(日大)、真保徳義(全興連)、福田慶治(映連)、阿部虎五郎(映連)、黒田陽子(外配協)、梶谷睦美(EGR)、山名泉(映技協) *敬称略

当協会は、技術委員会・分科会で検討した資料を配布し、その説明を行ないました。下記の文面は当協会が作成した資料。
『劇場に於ける予告編の音量問題』2002.8.30
『映画用デジタルサウンド・システム(マルチチャンネル)は録音時の制約がなければ凄まじい大音量での録音が可能なシステムといえる』デジタルサウンドの予告編制作が増え、音量についての苦情が各方面から出ており、弊害も発生している。国際的にも予告編・CMの推奨音量基準制定が進んでおり、我が国でも策定が必要としている。 録音・再生音量基準がない状況の弊害再生音量をコントロールしていない劇場は予告編が大きすぎるか、本編映画が小さすぎる事となる。予告編の再生音量を下げている劇場が多い。予告編の録音レベルの制約がなければ更に音量は大きくなる。結果的に、本編映画と予告編の音量格差が広がっている。劇場の再生音量レベルを全体に低く劇場が設定した場合、再生音量の基準がなくなるため、本編映画の録音レベルも高くなる。音量差を少なくするためには適正音量として平均化するためには、録音時での音量制約が必要となる。劇場は適正な再生レベルで固定することが前提となる。技術的に可能か本編映画と予告編を、同一再生レベルでの上映形態の確立が必要となる。映画業界一致した改善対策を行うことにより可能と考える。業界全体の統一見解による合意で策定しなければ改善されない。(機能しない)
(製作会社・配給会社・予告編制作会社・録音スタジオ・現像所・劇場、等の業界一致の合意)

○適正な録音レベルの推奨基準の合意
○適正な再生レベルの合意(劇場) 

音量差を少なくする対策を行った際の有益性
1) 劇場主は、予告編の再生音量が均一化されるため音量管理が容易になる。
2) 映画宣伝部は、本編映画と同一再生レベルでの予告編上映が原則となるため、予告編は最良な状況として上映できる。(「予告編の音は大きすぎる」と音量を下げる劇場がなくなる)
3) 本編映画の製作者は、大音量の予告編の影響で下げすぎた音量が適正音量に改善され、作品本来の製作・演出意図が観客に伝わる。
4) 観客は、劇場毎の音量格差が少なくなり、何処の劇場でも映画本来の迫力と魅力を享受できる。
5) 海外で制作された洋画予告編と、邦画予告編の音量差がなくなり国際間の互換性が生まれる。製作・配給共に、プリントの混在によるトラブルの解消ができる。本編映画を基準にした適正音量による上映形態の確立は、製作・興行・劇場・観客にとって最良な状況になると考えられる。改善されることで『予告編の音量レベルを制限することで、本編映画の音量を守る』『本編映画・予告編を最良な上映状況として観客に提供できる』『本編映画と予告編の音量を等しくすることで、劇場はどの作品も同じ音量で再生できる』

この会議後、全興連事務局が全国47都道府県の劇場組合にアンケート調査を行った結果を記します。
(2002.11映画産業連合会調査資料)回答スクリーン数は、202件743スクリーン(単独館325スクリーン、シネコン418スクリーン)で全国の28.2%のサンプリングで集計した。回答を見ると予告編の音量は本編に比べて85.7%が大きいと回答している。その対策として手動調節が過半数を占めている。本編が始まるまで映写技師が映写機に付いて音量調節していた事になる。「予告編の音量に関する研究会」では、劇場の大多数が音量調節などの対応を行なっている実態が判明し、改善すべく対策が必要との認識となった。その後、4回の会議の中で音量を制約する具体的対策の細部を検討し、我が国の予告編等の推奨音量値は85Leqm以下に定める事に至った。
 (社)映画産業団体連合会・予告篇等音量適正化委員会は、2004年7月1日から製作する劇場用予告編・CM等は85Leqm以内の音量で制作することを関連団体に通達した。現在、劇場で上映する予告編・CM等の製作会社は、ダビング時での音量値を記入した「ダビングレポート」を「予告編適性化委員会」に提出しなければならない事を義務づけている。
(社)映画産業団体連合会・予告篇適正化委員会ホームページhttp://homepage3.nifty.com/mpte/trailer/【文責・井上秀司】

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技術セミナー委員会・分科会メンバーの協力があり「予告編の音量問題」は大きく前進した。当協会の多良政司氏、眞道正樹氏、中山義廣氏、山本仁志氏、井上秀司氏、内田昇一氏、松島洋之氏の方々には特に多大な貢献をしていただいた事を記したい。

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